2014年 05月 21日
遠き恋人ローランサンと堀口大學 |
女流画家佐々木節子さんの作品が出展されている「光風会展」の会場で、佐々木節子さんと数分間お話しできたことがとても刺激的でした。エレガントで爽やかな画家の言葉にふれて、嬉しい思いが後を引きました。そしてある古い番組を思い出して、その録画をもういちど、ゆっくり見直したのでした。女流画家というとマリー・ローランサン。そして彼女に憧れた詩人堀口大學のドキュメンタリー風ドラマなのです。
2007年に、NHKハイビジョン特集 シリーズ恋物語「堀口大學 遠き恋人に関する調査」が放送されました。出演は西島秀俊、堀口すみれ子, 長谷川郁夫。脚本・監督:源孝志。ボクは放送時に、この番組を録画して時折、そして何度も、見返しているのです。
西島秀俊さんが演じる雑誌記者が取材のためにパリを訪れ、ふと出会った不思議なフランス人の娘に導かれるようにして、時には若き日の堀口大學と同化しながら、堀口大學と画家マリー・ローランサンとの知られざる恋の残り香を探して、パリ、ブルッセル、そしてマドリードへと、ゆかりの地を歩きます。不思議な娘マリーはいったい誰?マドリードの堀口大學とマリー・ローランサンの間に芽生えた感情は、果たして恋と呼べるものであったのでしょうか?そしてその結末は?幻想的なドラマとドキュメンタリー。不思議な世界に誘われる1時間50分でした。堀口すみれ子さんが語る父・大學の思い出、 大學の初の本格的評伝「堀口大學 詩は一生の長い道」(2009年河出書房新社)の長谷川郁夫さんの解説が、ときどき挿入されています。西島秀俊さんの朗読で、堀口大學の「月光とピエロ」からの詩や、アポリネール、ヴェルレーヌ、ローランサンなど「月下の一群」からの有名な訳詩の朗読も聞かれます。シャンソン「ミラボー橋」を歌うメトロの通路のギター弾きがいいし、「北駅」の映像もとても美しいのです。
この番組の再放送があるかどうかわかりません。けれども岩波現代文庫にある関容子著「日本の鶯(うぐいす)堀口大學聞書き」をご紹介したいと思います。この小さな文庫がたった一冊でボクの大好きな時代を彩った文人、歌人、パリの詩人たちすべての薫りを、大詩人のエスプリのきいた美しい語り口で堪能させてくれます。そしてこの書の、マリー・ローランサンの部分が最高のセンスで映像化されていると思えるのが、NHKハイビジョン特集「堀口大學 遠き恋人に関する調査」だったのです。
by kumamotoyukioch
| 2014-05-21 15:14
| 美術