2014年 07月 30日
宇治拾遺物語 第135話 丹後守保昌が下向の時 |
[意訳・宇治拾遺物語 第135話] 丹後守保昌が下向の時、致経の父に会う事
丹後守保昌(やすまさ)、国へ下りける時、与佐の山に白髪の武士一騎あひたり。路の傍らなる木の下にうち入りて立てたりけるを、国司の郎等ども「この翁、など馬よりおりざるぞ。奇怪なり。咎め(とがめ)おろすべし」といふ。ここに国司の曰く「一人当千の馬の立てやうなり。ただにはあらぬ人ぞ。咎むべからず」と制してうち過ぐる程に、三町ばかり行きて、大矢の左衛門尉致経(さえもんのじょう・むねつね)数多の(あまたの)兵を具してあへり。
国司丹後守保昌が行き会ったのは、多数の兵を率いた強弓の勇士、左衛門尉致経だった。国司が挨拶したので左衛門尉致経が言った。「先にひとりの老人にお会いになられたと存じます。父の平五大夫でございます。頑固な田舎者でわきまえもなく、さぞかし無礼をいたしたことでしょう」。左衛門尉致経が通り過ぎてから、国司は「やはり言ったとおりであったろう」と言ったとか。今は昔の話である。平五大夫は勇者として知られる平致頼(たいらのむねより)のことである。
by kumamotoyukioch
| 2014-07-30 21:20
| 文学