2015年 11月 01日
ヴィルトゥオーゾ |
むかし、ジョルジュ・シフラというピアニストがいた。超絶技巧の持ち主で、そのころ、誰も弾けないような速さで完璧にリストを弾いた。最後の打鍵で手首をさっと持ち上げて客席を向き、ニタつと笑うのが常だった。ヴィルトゥオーゾという賞讃はこのひとのためにあった。ところが主流になれず人気はいまひとつだったのは、上手く弾きすぎるためだったのだろう。職人芸という言葉は、当時、芸術家を軽んじて用いられたのである。いまでは、若いピアニストがいとも容易く超絶技巧を駆使した演奏をする。ヴァイオリンでも同じことだ。そして職人芸という言葉は、いま、工芸の世界で伝統的な名枝を讃える意味で使われる。(ボクが紙で蝶々を作ると、おたくのダンナは指先が器用ね、と言われるそうだ。器用にピアノを弾く人を、いまでは芸術家と呼ぶのだと、教えてやれ)。
by kumamotoyukioch
| 2015-11-01 21:26
| 音楽