2018年 06月 02日
ながながしよをひとりかもねむ |
小倉百人一首 歌番号=3
柿本人麻呂(出典 拾遺集)
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の
ながながし夜をひとりかも寝む
あしびきの やまどりのをの しだりをの
ながながしよを ひとりかもねむ
《我流抄訳》
山鳥の尾が垂れて長いように
ひとりで寝る夜も長いものですよ
《我流意訳》
たとえて言うなら山鳥の
長くしだれた尾羽のように
夜が長い。わかってくださいませんか。
あなたと離れてひとりで寝る夜は
あまりにもさびしく長い夜なのですよ。
《内緒話》
山鳥のキジは、雄と雌が峰を隔てて寝るということだ。垂れ下がる雄の尾が長くて邪魔なのか、それともまさかのことだが、雄の高い「いびき」を雌が嫌うせいなのか、とにかく山鳥のつがいは、離ればなれで寝るらしい。長い長い夜でも山鳥は、ひとり寝ならば、さぞや安眠できるのだろう。
わたしもまた山鳥と同じように長い長い夜をひとりで寝るのだけれど、あなたとの間には、思いが届かないほどの長い距離があるから、とても山鳥の心地にはなれない。でもね、山鳥だってほんとうは、ひとり寝はさびしいのだよ。
長い長いゆるりとした夜をもてあます男の歌なのに、読んでみるとリズム感がとてもいい。上の句の「の-の-の-の」が心地いいのだと思う。柿本人麻呂の恋の歌だから、もっと情熱的に訳した方がいいのかもしれないけどね。
by kumamotoyukioch
| 2018-06-02 21:53
| 文学