2018年 07月 28日
ひとをもみをも うらみざらまし |
小倉百人一首 歌番号=44
ちゅうなごんあさただ
中納言朝忠 (拾遺集)
逢ふことの絶えてしなくはなかなかに
人をも身をも恨みざらまし
あふことの たえてしなくば なかなかに
ひとをもみをも うらみざらまし
《我流抄訳》
もしこの世で
もう逢えないのなら
かえって そのほうが
あなたのことも
わたしのことも
恨みはしないものを
《我流意訳》
逢えないのなら
いっそのこと
逢えないほうがいい
かえって そのほうが
あなたのことも
わたし自身のことも
恨まないでいられます
《内緒話》
恋の情景はいろいろ想像できますね。このひとは愛するひととの逢瀬が作れないので、いらいらしているのでしょうか。それともまだ、そのひとに幼い慕情を打ち明けることができない初心な男性なのでしょうか。あるいは、忍ぶ機会があっていちどは契りあったものの、つぎのきっかけがつかめないで悩んでいるのでしょうか。いずれにせよ男たちはだれもかれも、恋に焦がれて苦しいのです。ところが、お相手の女性の立場や気持ちがどうなのかわかりません。あまり気乗りしていないのか、それとも人目をはばかるのでしょうか、どうも男にたいして積極的ではなく、少し距離を置いているような気がします。
ちゅうなごんあさただ
中納言朝忠 (拾遺集)
逢ふことの絶えてしなくはなかなかに
人をも身をも恨みざらまし
あふことの たえてしなくば なかなかに
ひとをもみをも うらみざらまし
《我流抄訳》
もしこの世で
もう逢えないのなら
かえって そのほうが
あなたのことも
わたしのことも
恨みはしないものを
《我流意訳》
逢えないのなら
いっそのこと
逢えないほうがいい
かえって そのほうが
あなたのことも
わたし自身のことも
恨まないでいられます
《内緒話》
恋の情景はいろいろ想像できますね。このひとは愛するひととの逢瀬が作れないので、いらいらしているのでしょうか。それともまだ、そのひとに幼い慕情を打ち明けることができない初心な男性なのでしょうか。あるいは、忍ぶ機会があっていちどは契りあったものの、つぎのきっかけがつかめないで悩んでいるのでしょうか。いずれにせよ男たちはだれもかれも、恋に焦がれて苦しいのです。ところが、お相手の女性の立場や気持ちがどうなのかわかりません。あまり気乗りしていないのか、それとも人目をはばかるのでしょうか、どうも男にたいして積極的ではなく、少し距離を置いているような気がします。
「逢うことなど絶対にない」ということがもしあるなら、そのほうがかえって、誰を恨むことなく未練心を断ち切ってしまえるのに、と詠んでいますが、相手が死んでしまわない限り、それはありません。これは、そんな状況がもしもあればという「架空の話」。男の恋の苦し紛れの逃げ言葉にしか過ぎません。ここは話を裏返しに読まなければなりませんね。逢いたいけど逢えない、だからあなたのことを恨みます。わたしの不運も恨みます…。藤原朝忠(あさただ)三条右大臣定方(さだかた)の子、従三位中納言にまで昇進した笙(しょう)の名手。恋愛遍歴が豊かで、「忘らるる身をば思はず」歌番号=38 の右近も恋人のひとりでした。
by kumamotoyukioch
| 2018-07-28 18:11
| 文学