2018年 08月 03日
くだけてものを おもふころかな |
小倉百人一首 歌番号=48
みなもとのしげゆき
源重之 (詞花集)
風をいたみ岩うつ波のおのれのみ
くだけて物を思ふころかな
かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ
くだけてものを おもふころかな
《我流抄訳》
激しい風に
岩うつ波は
砕け散る
わたしの思い
《我流意訳》
わたしひとり
激しい風に
心破れ
岩に砕ける
波しぶき
《内緒話》
「東映」映画のオープニング・ムービーをすぐに連想する。風が激しくて、波が岩にぶつかって砕け散る。波は何度も打ち寄せ、岩にぶつかって砕け、波しぶきは千々に乱れ、飛び散る。歌は、この情景に男の片恋を重ねる。打ち寄せる波のように、なんど恋を仕掛けても、女は岩のように冷たく、動じない。「わたしの心は波しぶきのように千々に乱れる」と、素直に男の片恋を鑑賞したいのだが、ぼくには少しゴツゴツした違和感がある。男はこの恋に玉砕して、さっぱりしたのか、あるいはまだ、うじうじと心残りしているのか、わからない。
風が激しいなか、波が何度も繰り返して勢いよく岩にぶつかる、しかもその度に波しぶきが砕け散るという情景から、どんな「片恋」の様子が見えるでしょうか。また「岩が冷たい」「岩が動じない」「岩がびくともしない」などの言葉が現代語訳で使われていますが、「岩」は、そもそも恋のお相手の女性を表現するに、ふさわしいイメージでしょうか。「何度も攻略しようとしたが、その女は難攻不落の鉄壁の城である」というような無粋な表現とさして変わりはありませんね。源重之(みなもとのしげゆき)清和天皇の曾孫(ひまご)。国司として筑前や肥後などの地方官を歴任し、最後に陸奥で没したそうです。
みなもとのしげゆき
源重之 (詞花集)
風をいたみ岩うつ波のおのれのみ
くだけて物を思ふころかな
かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ
くだけてものを おもふころかな
《我流抄訳》
激しい風に
岩うつ波は
砕け散る
わたしの思い
《我流意訳》
わたしひとり
激しい風に
心破れ
岩に砕ける
波しぶき
《内緒話》
「東映」映画のオープニング・ムービーをすぐに連想する。風が激しくて、波が岩にぶつかって砕け散る。波は何度も打ち寄せ、岩にぶつかって砕け、波しぶきは千々に乱れ、飛び散る。歌は、この情景に男の片恋を重ねる。打ち寄せる波のように、なんど恋を仕掛けても、女は岩のように冷たく、動じない。「わたしの心は波しぶきのように千々に乱れる」と、素直に男の片恋を鑑賞したいのだが、ぼくには少しゴツゴツした違和感がある。男はこの恋に玉砕して、さっぱりしたのか、あるいはまだ、うじうじと心残りしているのか、わからない。
風が激しいなか、波が何度も繰り返して勢いよく岩にぶつかる、しかもその度に波しぶきが砕け散るという情景から、どんな「片恋」の様子が見えるでしょうか。また「岩が冷たい」「岩が動じない」「岩がびくともしない」などの言葉が現代語訳で使われていますが、「岩」は、そもそも恋のお相手の女性を表現するに、ふさわしいイメージでしょうか。「何度も攻略しようとしたが、その女は難攻不落の鉄壁の城である」というような無粋な表現とさして変わりはありませんね。源重之(みなもとのしげゆき)清和天皇の曾孫(ひまご)。国司として筑前や肥後などの地方官を歴任し、最後に陸奥で没したそうです。
さて、もう少し時間をかけて、この景色を眺めてみることにしましょうか。波はまだ、諦めきれずに打ち寄せて、岩を叩く。そのうちに、潮が満ちて、岩は沈む。大きな波のうねりが、岩の上をゆらりゆらり通り過ぎる。男は明け方になって、海を見ながら帰って行った…。
by kumamotoyukioch
| 2018-08-03 11:35
| 文学